重症心身障害児を対象とした多機能型(児童発達支援+放課後等デイサービス)で、当事業所は定員5名で運営しています。定員を増やせば売上が伸びる、という一般論はこの領域では成り立ちにくいのが現実です。
なぜなら、重症心身障害児向けの障害児通所支援は、利用定員区分によって報酬単位が大きく変わるからです。ここを理解せずに「拡大」を語ると、収支設計は簡単に崩れます。
報酬は“定員が増えるほど有利”ではない
重症心身障害児向けの報酬構造(児童発達支援)は、次のとおりです。
- 利用定員が5人以上7人以下:2,131単位
- 利用定員が8人以上10人以下:1,347単位
- 利用定員が11人以上:850単位
この構造が意味するのは明確です。定員を増やしても、定員区分を跨いだ瞬間に単位が下がり、1人あたりの収入が落ちるということです。したがって「定員=売上増」にはなりません。むしろ、区分を跨ぐ設計は、収支を悪化させるリスクを内包します。
定員5名は“高単位ゾーン”に留まれる設計
当事業所の定員5名は、「5〜7人区分(2,131単位)」のレンジに収まります。ここは単位が高く、収支設計上の前提が作りやすいゾーンです。
一方、8人以上10人以下になると、単位は1,347単位に下がります。単位の落差は小さくありません。さらに11人以上では850単位です。拡大の結果、単位が下がり続ける設計になっている以上、規模を大きくするほど「収益性が上がる」とは言いにくくなります。
だからこそ、定員5名は偶然ではなく、報酬構造に適合した経営設計です。
収支は「単位×稼働×加算×固定費」の掛け算
当事業所の前提は、定員5名、利用率100%超、欠席加算以外はすべて取得、人件費は売上の最大で60%(賞与・法定福利費込み)、実績は50%台、そして黒字化まで約6カ月です。
このモデルは、単位が高いゾーンで「稼働」と「加算」を取り切り、固定費を吸収する設計になっています。逆に言えば、単位が下がるゾーンに移行すれば、同じ稼働でも売上が下がり、固定費吸収が難しくなる可能性があります。
損益分岐点3.5人が成立する理由
定員5名モデルの損益分岐点は3.5人(70%稼働)です。小規模ゆえに1名の変動インパクトは大きいですが、単位が高いゾーンにいることで、分岐点が現実的な水準に収まっています。
また、多機能型は0歳から18歳までを対象とし、放課後等デイサービス単独型(6歳から18歳)と比べて、理論上の対象期間が18年/12年で1.5倍です。さらに当事業所では、実際に18歳まで在籍しているケースが継続しています。継続在籍がベースになるため、稼働を安定させやすい構造があります。
「定員を増やす」より「区分を跨がない」が経営上重要
ここが最も誤解されやすい点です。重症心身障害児向けでは、定員を増やすこと自体が目的になりません。むしろ、区分を跨いで単位を落とさないことが、経営上の重要課題になります。
もちろん、定員を上げても、稼働や加算、運営体制の最適化で成立するケースはあり得ます。ただし、少なくとも「定員を上げれば収入が上がる」という単純な話ではありません。報酬構造がそれを許していないからです。
結論
重症心身障害児向け多機能型で定員5名が合理的なのは、支援密度だけが理由ではありません。報酬単位が定員区分で大きく下がるという構造がある以上、定員を増やしても収入が上がるとは限らず、区分を跨いだ瞬間に収支が悪化するリスクがあります。
当事業所は、5〜7人区分(2,131単位)の高単位ゾーンで、稼働を安定させ、加算を取り切り、人件費(賞与・法定福利費込み)を50%台に収める設計を行っています。その結果として、損益分岐点3.5人が成立し、黒字化まで約6カ月で到達しています。
重症心身障害児分野の経営は、「大きくする」ではなく「区分と構造を設計する」が本質です。定員5名は、その設計思想の帰結です。

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